ドローンの「リモートID」とは?「機体登録制度」で義務化された内容を解説します
2022年6月に改正された航空法にて、ドローンをはじめとする無人航空機の「機体登録制度」が義務付けられました。安全面を考慮して設けられた制度ですが、「リモートID」など聞き慣れない言葉も登場し、困惑されている方もいらっしゃるとは思います。
まずは本記事を読み、所有する機体が本制度の対象となるかどうかをしっかりと確認しましょう。
そのほか、機体登録制度が新設された背景から義務化された内容まで詳しく解説します。義務化されたリモートID製品もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ドローンの機体登録が義務付けられた背景とは?
今後の物流社会において、政府は「ドローンを使った物流の実現」を目指しています。
そこで“空の物流社会”における機体の安全性にお墨付きを与える認証制度をつくり、「機体の安全」「操縦の安全」「管理の徹底を強化すること」を目的として定めました。
国土交通省の調べでは、無人航空機であるドローンやラジコンなどの利活用が急増しているとのこと。
その一方、墜落事故、人や家屋に損害を与える事故、無許可の飛行により飛行中の航空機などの運航に影響を与える事案が頻発していました。
ドライバーの人手不足などを背景に、物流や警備、災害対応などでも活用されていますが、ドローンを悪用する事件も発生しています。
無人航空機の登録が義務化
2022年6月に改正された航空法は、これらの状況を鑑みたものです。同法で設けられた機体登録制度では、「事故発生時の所有者把握」「事故の原因究明や安全確保」「安全上問題のある機体の登録拒否」を目的として定めています。
本制度で義務化されたのは、「機体登録の義務」「登記番号(12桁)の表示義務」の2つです。
登録していない無人航空機は原則飛行禁止、登録記号は機体に記号を表示するだけでは地上から判読することが困難なため、飛行中は登録記号などの情報を電波に乗せて送出する「リモートIDの搭載」が義務付けられました。
機体登録制度による注意点
以下が、機体登録制度の注意点です。有効期間があり、場合によっては罰金などの刑事罰に処される可能性がありますので、しっかりと内容を確認しておきましょう。
- 有効期間は3年間となります。
- 該当する機体を登録せずに飛行させた場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
(※一部対象外がありますので、詳しくは国土交通省のHPにてご確認ください) - 屋内で未登録のドローンを飛行させる場合は、航空法の適用範囲外となります。
簡単に流れをまとめると、本制度で定められた「機体登録」と「登記番号(12桁)の表示」の義務化に伴い、「リモートIDの搭載」が必要になりました。
ドローンの「リモートID」とは?
登記番号の表示義務に伴い、識別情報を電波で遠隔発信する機器「リモートID」を備えなければなりません。
個々の機体に対してIDが付与され、BluetoothやWi-Fiなどの無線通信を通して、上空を飛行するなど離れた場所からでも、機体情報を含む電波を1秒間に1回以上発信することができます。
リモートID機能の分類
リモートID機能は、「内蔵型」と「外付型」に分類されます。
リモートID機能が内蔵されていない製品や自作機は、外付型の機器を別途購入して取り付けなければなりません。
なお、外付型のリモートID機器を新規に取り付けたり変更した場合は、製造者名・型式・製造番号を新規登録または変更する必要があります。
リモートIDの発信方法
登録記号をリモートID機器から発信するためには、専用アプリ「DIPS APP」が必要です。
受信できる関係者は航空局や重要施設管理者、警察官が想定され、受信機を用いて国交省の登録システムに照会することで、機体情報を把握できるという仕組みです。なお、この機体情報に個人情報は含まれません。
表示義務による注意事項
機体重量により文字のサイズに規定があり、「25kg以上は25mm以上、25kg未満は3mm以上」の表示が必要となりますので注意しましょう。
なお、事前登録した機体は3年間の登録期間が経過して更新するときも、リモートID機器の搭載は引き続き免除されます。
ただし、登録完了後に機体の抹消を行ったり、機体修理などで製造番号が変更となった場合は、事前登録の取扱いではなくなりますので注意しましょう。
そのほか、リモートIDの搭載が不要となる機体は以下の通りです。
- 法執行機関である警察や海上保安などの秘匿性が求められる業務に使用される機体
- 係留した状態(短距離)で十分な強度を有する紐などを使用する機体
- 特定区域内での補助者の配置、区域範囲の明示など安全確保措置を講じた上で飛行する機体
- 研究開発などのために登録が不要となる試験飛行として届け出た機体
「リモートID」は、対象となる機体の情報をデジタルで一括管理することを目的とした仕組みです。
機体登録が義務付けられている対象範囲
機体登録制度では、規定範囲の全ての無人航空機が対象です。航空法にて、以下のように航空機の定義が定められています。
無人航空機とは『航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うこと)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案して、その飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわ れるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く)』
航空法第9章
なお、上記における「重量」とは、無人航空機本体の重量及びバッテリー重量の合計を指しており、バッテリー以外の取り外し可能な付属品の重量は含まないものとされています。
航空法改正に伴う変更点
航空法上の無人航空機は、機体の小型化に伴い200g以上から100g以上に変更となりました。機体本体の重量とバッテリー重量の合計が100g以上で、遠隔操作または自動操縦で飛行が可能な無人機であれば、小型のマイクロドローンやラジコンでも無人航空機に該当します。
自作機であっても、これに該当する機体は登録対象となるので注意してください。また、複数の機体を所有していても登録は1機ごとに必要となります。
所有する機体が航空法の対象にならない場合でも、ドローンオーナーであれば必ず把握しておきたい情報です。
ドローンの機体登録をしなくても良い場合
以下の条件を満たす機体については、機体登録制度の対象外となります。
- 機体重量が100g未満のもの
- 航空法第131条の4の但し書き(※1)に基づきその飛行に当たって登録が免除されているもの
- 建物内等の屋内を飛行するもの
※1…無人航空機登録原簿に登録を受けたものでなければ、これを航空の用に供してはならない。ただし試験飛行を行うことにつきあらかじめ国土交通大臣に届け出ている場合、その他の国土交通省令で定める場合は、この限りではない。
航空法第131条
また、ゴム動力飛行機や重量100g未満のラジコン、マルチコプターなどは「模型航空機」に分類されますので、登録を含む無人航空機の規制は適用されません。
ただし、空港等周辺や一定の高度以上の飛行については国土交通大臣の許可などが必要となります。
判断が難しい場合には、管轄の専門機関に問い合わせて確認しましょう。
ドローンの機体登録の方法・手順
登録サイトは国土交通省の「ドローン登録システム」を使用します。登録方法の手順は、大きく分けて以下の4ステップです。
- 申請(アカウント開設)…ドローンの所有者及び使用者の氏名・住所などの情報、機体の製造者や型式などを入力して申請します。
- 入金(手数料納付)…クレジットカードや銀行など、指定の方法で申請にかかる手数料を入金します。
- 機体登録(登録記号発行)…すべての手続きが完了しますと、申請したドローンの登録記号が発行されます。
- 登記番号表示・リモートID書込…ドローンを飛行させる前に、登記番号を機体に記載するなどの方法で鮮明に表示します。リモートIDはアプリ(DIPS APP)を利用して発信情報を書き込みます。
詳細は「無人航空機登録ポータルサイト」をご覧ください。
自動車の無免許運転が罰せられるのと同様に、未登録で機体を飛ばすことができなくなりました。対応は後回しにせず、迅速に進められるようにしましょう。
【2022年最新】ドローンのリモートIDデバイス一覧
2022年10月現在において、機体登録制度に対応するドローンのリモートIDデバイスは、以下の通りです。
- TEAD
外付けリモートIDソリューション及び内臓型
- イームズロボティクス
EAMS外付け型リモートID
- Braveridge
バッテリーレス仕様の基板タイプのリモートID
所有する機体と使用方法に合わせて、適切な製品をお選びください。
まとめ
無人航空機を所有している方には、趣味のラジコンを所持している、遊ぶつもりで所持している、仕事として所持している、また個人として、法人として所持しているなど、さまざまな理由があると思います。
本記事の内容を参考に、対象となる無人航空機を所有している方は、まず義務化された機体登録を行いましょう。
手数料納付の通知や納付後の登録記号発行に数日かかるケースもあるようなので、余裕を持って登録することをおすすめします。