VRビジネスの可能性とは?企業の活用事例を業種別に紹介します
VRゴーグルを装着することで、360度に映し出された映像を観ながら、さまざまな体験ができるVR(バーチャル・リアリティ)。
もともとエンターテインメント分野を中心に導入されてきたVRですが、最近ではビジネスに活用する動きが広がっています。この動きに乗り遅れないようにするためにも、企業においては早期から準備しておくことが重要です。
そこで今回は、VRビジネスの可能性について、企業の活用事例を交えてお伝えします。
VRの基本知識から学びたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
VR市場の現状と今後の展望
国際会計事務所のPwCが発行した『グローバルエンターテイメントからの視点&メディアの見通し2021-2025』のレポートによると、2020年のVR市場規模は約1,970億円で、2019年と比べると31.7%増加しています。
この成長率だけではなく、2025年までの予測成長率を見ても、全メディアのなかでVRがもっとも高い数字であることがわかります。
エンタープライズ向けのものと比べて、個人向けの商品・サービスにおけるVRの普及率はやや劣りますが、将来的にVR市場の規模はますます拡大していく見込みです。
世界のVR市場の規模は約18億ドルで、成長率は全メディアセグメントのなかでトップです。また、今後の予測成長率を見てもVRがトップとなっており、右肩上がりの成長が見込めます。
企業におけるVRのビジネス活用の動き
昨今では、社内研修・VRオフィス・開発工程の簡略化などの用途にVRを活用する企業が見られるようになりました。
社内研修では、営業研修やコンプライアンス研修などでVRが活用されています。
また、VRオフィスについては、VRによって同じ空間で働いているような感覚を得られるため、リモートワークにおけるコミュニケーションの促進に有用です。
商品やサービスに取り入れるだけではなく、日常業務のアップデートなど、社内向けの用途にもVRが活用されています。
【業界別】企業におけるVRのビジネス活用事例
ここからは、企業におけるVRのビジネス活用事例について、業界別に8つご紹介します。VRのビジネス活用に興味があるけれど、具体的なイメージが湧かずにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
小売
VRは、通販事業にも活用されています。VRを活用した購買システムの構築は、低コストでありながら、実店舗とは違い、売り場に捉われない販売戦略を展開できるため、多くの企業に注目されています。
また、VRによってユーザーエクスペリエンスを向上させることができれば、通販事業のリスクである返金対応についても、負担の削減が期待できます。
居住地域に関係なく商品を購入できること、移動時間や持ち帰る手間が発生しないこと、人ごみのなかで買い物をする必要がないことなど、ユーザーにとってもたくさんの利点があります。
観光
観光業界においては、VRを活用した旅行体験が続々と登場しています。コロナ禍がきっかけとなり、自宅に居ながらでも、気軽に世界中の景色を楽しめて、現地の雰囲気を味わえることから、こうした疑似旅行のサービスが注目を集めるようになりました。
地上に居ながら航空体験ができる世界初のバーチャル航空施設『FIRST AIRLINES』では、VR体験・機内食・現地との中継動画を軸としたリアルな旅行体験が可能です。また、大手航空会社のANAも、『ANA Virtual Trip』というVRを活用したサービスを展開しています。
VRを活用した旅行体験のメリットは、手軽さやコストの低さだけではありません。身体的な理由で旅行が難しい方も安心して楽しめるという利点もあります。
医療
医療現場では、医師の研修トレーニング、患者のリハビリなどにVRが活用されています。常に人命と隣り合わせの医療現場では、若手医師や医学生が、時間をかけて丁寧に学ぶ余裕がありません。
そこでVRを用いることによって、修得しなければならない知識や技術を、体系的に伝えることが可能になりました。手術や救護対応の様子など、臨場感あふれる内容も体験できます。
そのほか、成功率を高めるために、事前にVRで手術のシミュレーションを行うなど、現役医師の技術向上に役立てる動きも進んでいます。
患者のリハビリについても、VRゴーグルを使用し、ゲーム感覚で体を動かすことによって、楽しみながら効果的に取り組めるようになりました。
不動産
不動産業界では、物件の内見にVR技術が活用されています。転居先が遠方にある場合、時間の兼ね合いで複数の物件を回れないことや、そもそも現地に来られないこともめずらしくありません。
また、写真や動画のみでは細部の情報まで伝わりにくいため、問合せ対応の増加や入居後のミスマッチにつながるなど、従来の仕組みには課題が山積みでした。
不動産業者にとっても、内見は時間と人員を割かれる業務です。VRの活用で内見が不要になれば、負担の削減が期待できます。
教育
教育現場であれば、VRを活用することによって、教科書のみでは概要を伝えきれない分野であっても扱うことができます。
VRは子どもたちの興味関心を引き、理解を深めるために効果的なツールです。教科書だけでは理解しにくい内容や、感覚的に覚える必要がある内容などを、VR体験を通じてスムーズに学習できます。
たとえば、危険な薬品を使用する理科の実験では、VRを用いることで、安全を確保しつつ、実際に行った場合と同様の学習効果が期待できます。
また、VRを活用した教育は、子どもの理解度や学習意欲を高めるだけではなく、教員の負担軽減にもつながっています。
ゲーム
エンターテイメントに多く活用されているVRは、ゲーム業界でも普及が進んでいます。昨今では、『Play Station VR』をはじめとする、さまざまなVRゲームシステムが開発されるようになりました。また、VRだけではなく、ARを活用したゲームも続々と誕生しています。
自動車
自動車業界では、試乗体験などにVRが活用されています。制作は360°カメラで撮影するのみと手軽なこともあり、たくさんのメーカーがVRコンテンツを公開しています。
ドイツの自動車メーカーであるアウディは、『Audi VR Experience』というVRを活用した新型車のプロモーションを実施。車の外観を360°から確認できたり、顔を近づけると内部のパーツが透けて見えたりなど、VRならではの体験ができるコンテンツです。
家具
家具業界でもっとも有名なのは、IKEAのインテリアシミュレーター『IKEA VR Experience』です。家具の配置を事前にシミュレーションしておくことで、部屋との相性や全体のコーディネートをチェックできます。目線の設定も可能なため、購入後のミスマッチも防ぐことができる画期的なコンテンツです。
また、大塚家具や島忠ホームズといった大手家具販売店も専用のアプリをリリースするなど、国内の企業でもVRの活用事例が増えています。
360度に映し出された映像を観ながら、さまざまな体験ができる特徴を活かし、幅広い業界でVRの活用が進んでいます。
まとめ
すでに日常生活に溶け込んでいるVRの技術は、将来的にあらゆるビジネス分野での活用が期待されています。企業が抱える課題の解決だけではなく、まったく新しい価値を生み出す可能性もあるでしょう。
そのためにも、企業の担当者はVRに関する基本的な知識を理解する必要があります。ぜひ本記事で解説した内容を、VRのビジネス活用にお役立てください。